結論から整理すると、扁桃周囲膿瘍の「直接的な病因」は細菌感染ですが、その「根本的な発症の引き金」として過度なストレスと疲労が決定的な役割を果たしています。医学的に見ても、両者の間には極めて密接な因果関係が存在します。
本来、人間の喉にある口蓋扁桃(こうがいへんとう)は、侵入してくる病原体から気道を守る免疫器官です。通常であれば、多少の細菌が侵入しても自前の白血球や免疫グロブリンが撃退します。しかし、過重労働、深夜残業、対人関係の精神的ストレスなどが蓄積すると、自律神経のバランスが著しく乱れます。交感神経の過剰な緊張が続くと、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが過剰分泌され、リンパ球やマクロファージの機能が著しく抑制されてしまいます。
さらに、過度な緊張や疲労は唾液の分泌量を激減させます。唾液中に含まれる抗菌物質「IgA抗体」が減少することで、口腔内の自浄作用が失われ、常在菌が爆発的に増殖しやすい環境が整ってしまうのです。こうして免疫のバリアを突破したレンサ球菌やブドウ球菌、嫌気性菌などが、急性扁桃炎の枠組みを超えて扁桃被膜を突き破り、周囲の軟部組織へと膿(うみ)の袋を形成していきます。
労働社会学的な視点から見ても、本疾患は20代から40代の働き盛りに好発します。「少しくらいの喉の痛みで仕事を休めない」「責任あるプロジェクトの最中で代わりがいない」という心理的プレッシャーが受診を遅らせ、自己防衛のための市販薬連用が病態の隠蔽を招き、結果として膿瘍形成という最悪のステージまで悪化させてしまう構造が浮き彫りになっています。