上野の書店文化を語る上で欠かせない存在が、アトレ上野などに店舗を構える老舗「明正堂」だ。昭和の時代から通勤客や地域住民の知のインフラとして愛され続けてきたこの書店は、時代の変化に柔軟に対応しながらも、地域に根ざした棚作りを守り続けている。
厳しさを増す出版業界において、リアル書店の役割は「在庫の陳列」から「価値の提案」へと大きくシフトしている。明正堂の売場に立つと、平積みのラインナップや手書きのPOPから、売れ筋を追うだけではないスタッフの意志と熱量が直接伝わってくる。駅の喧騒のすぐ隣で、知の探訪者たちを穏やかに迎え入れるその佇まいは、街の精神的支柱とも言える存在感を放っている。