法廷で証言台に立った母親の供述や提出された調書によると、母親は決して意図的な加害者としてではなく、むしろ極度の困窮と家庭内暴力の中で追い詰められていった弱者としての側面を持っていました。しかし結果として、それが子どもへの適切な養育環境を著しく損なう要因となっていたことが明らかになっています。
遠藤裕喜の生い立ちにおいて、実父からの暴力は日常茶飯事であり、母親自身も激しいDVに晒されていました。両親の離婚後、母親が引き取ったものの、パートを掛け持ちする生活苦から子どもたちと十分に向き合う時間的・精神的余裕は失われていきました。食事の提供が滞るなどのネグレクト状態が生じ、遠藤は幼少期から「家庭内での絶対的な安心感」を得られないまま成長することになります。
公判における母親の証言では、息子の内向的な性格や孤立を把握しながらも、経済的・心理的に限界を迎えていた当時の苦況が涙ながらに語られました。2026年1月の判決言い渡し時、法廷の遮へい措置越しに聞こえた母親の取り乱す声と、傍らに寄り添う妹が母親を必死になだめる様子は、公判を傍聴した取材記者たちの手記にも克明に記録されています。