猿回しに対して最も強く投げかけられるのが「動物虐待ではないか」という疑念です。インターネット上では「芸を覚えないと叩かれる」「食事を抜いて服従させているのではないか」といった噂が絶えません。これらは単なる都市伝説なのでしょうか。
歴史を振り返ると、昭和期以前の古い調教法において、体罰や威嚇によってサルを従わせる手法が存在したのは否定できない事実です。ニホンザルは極めて序列意識が強い動物であるため、人間が「群れのリーダー」として絶対的な優位に立つ目的で、棒で叩く、厳しい叱責を与えるといった力による上下関係の構築が行われていた時代がありました。
しかし、現代の現場では調教手法の抜本的な見直しが進んでいます。現在の主流は、望ましい行動をとった瞬間に褒美(餌やスキンシップ)を与えて行動を定着させる「陽性強化トレーニング(ポジティブ・リインフォースメント)」です。恐怖で縛る調教はサルに強い反発心や突発的な攻撃行動を生むため、長期的にはパフォーマンスが破綻することが科学的にも証明されているからです。
とはいえ、舞台上で調教師がサルを軽く制止する動作や、大きな音を立てて注意を引く仕草が、観客の目には「叩いている」「折檻している」と映るケースは少なくありません。体罰の有無にかかわらず、拘束具を用いた管理そのものを虐待とみなす動物愛護団体との間には、依然として埋まらない認識の溝が存在します。