こうした歴史学のパラダイムシフトは、現代の映像配信・メディア産業にも大きな地殻変動をもたらしている。かつてステレオタイプな毒婦として描かれていた彼女たちは今、多面的で共感を呼ぶ人間ドラマの主役として描かれ直されている。
日本放送協会(NHK)が放送した大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、北条政子が孤立無援のなかで覚悟を決めていく姿が描かれ、視聴者の歴史観を大きくアップデートした。NHKオンデマンドでも同作の関連ドキュメンタリーがロングヒットを記録し、旧来のイメージを覆す契機となった。
世界的な潮流も軌を一にしている。中国で社会現象となったドラマ『武則天-The Empress-』をはじめ、Netflixなどのグローバル配信プラットフォームでは、過酷な権力闘争を生き抜いた女性統治者の複雑な内面を描く大作が相次いでヒットを飛ばしている。視聴者が求めているのは、単色に塗りつぶされた悪女ではなく、不条理なシステムと戦い抜いた生身の指導者の姿なのだ。