熱心なファンの間で長年議論の的となっているのが、「花の呼吸 壱ノ型 理由」に関する設定上の空白です。作中では弐ノ型「御影梅」から始まり、肆、伍、陸、そして終ノ型が描かれましたが、壱ノ型と参ノ型は名称すら登場していません。
公式ファンブックや作中の描写から見出せる最大の理由は、栗花落カナヲの特異な習得プロセス(見取り稽古)にあります。
公式設定によると、カナヲは胡蝶カナエから直接手取り足取り呼吸の手ほどきを受けたわけではありません。カナエとしのぶは当初、過酷な境遇から救い出したカナヲを戦わせたくないと考え、剣士として育成することを避けていました。しかし、カナヲは姉たちの稽古風景をその驚異的な動体視力で観察し、「見よう見まね」で勝手に花の呼吸を体得して最終選別を突破したという驚くべき経歴を持っています。
この事実から、以下の2つの構造的背景が導き出されます。
- 実戦における最適化:壱ノ型が「標準的な構え」や「単発の基本的な斬り下ろし」であった場合、実戦経験の中でより強力な連撃(肆・伍ノ型)や迎撃技(弐ノ型)が優先して使用された。
- 作劇上のテンポと緊迫感:無限城編という命懸けの極限状況下において、作者である吾峠呼世晴氏が冗長な基本技の披露を省き、局面打開に直結するダイナミックな型に絞って描写した。
存在しないのではなく、「実戦の刹那において繰り出す必要がなかった」、あるいは「カナヲが自らの戦闘スタイルに合わせて選別した結果」と解釈するのが極めて自然です。