公式ガイドブックや当時の吉田秋生によるロングインタビューを紐解くと、アッシュの造形には若くして世を去った夭折の俳優リヴァー・フェニックスの面影が色濃く投影されていることが知られている。だが、読者を真に惹きつけてやまない裏設定の本質は、ビジュアルの美しさだけではない。物語の底流に仕込まれた「決して肉体関係を結ばない魂の共鳴」という厳格なプロット設計にある。
過激な暴力と性被害に晒され続けてきたアッシュにとって、他者から向けられる欲望は常に暴力と同義だった。だからこそ、英二の抱く一切の見返りを求めない敬愛と慈しみだけが、彼の剥き出しの傷口を塞ぐ唯一の薬となったのだ。原作ラストシーン、ニューヨーク公共図書館でアッシュが英二の手紙を抱きしめながら浮かべた微笑。それは敗北の死ではなく、英二によって魂を完全に救われた青年の、最初で最後の安寧の瞬間だったと解釈するファンは少なくない。