全国の美術館ファンや旅行者が抱く最大の疑問の一つが、「東京の竹久夢二美術館」と「岡山の夢二郷土美術館」の展示内容や鑑賞体験の違いです。両館は設立母体や所蔵作品の傾向が異なり、それぞれ独自の魅力を持っています。
東京都文京区本郷に位置する竹久夢二美術館は、弁護士・鹿野琢見氏の個人コレクションを基礎として1990年に開館しました。夢二が青春期を過ごし、多くの名作を生み出した本郷の地に立ち、隣接する弥生美術館と渡り廊下で結ばれています。雑誌の挿絵、楽譜の表紙、木版画、千代紙や封筒などのグラフィックデザイン、装幀本の充実度は随一を誇り、大正モダニズムの息吹を凝縮した展示構成が特徴です。
対して、岡山県岡山市中区にある夢二郷土美術館(本館)は、夢二の生誕地である岡山で実業家・松田基氏によって1966年に設立された歴史ある美術館です。名勝・後楽園の北東、旭川のほとりに位置し、約3,000点に及ぶ所蔵品の中から肉筆画の最高傑作を中心に公開しています。さらに岡山県瀬戸内市には、夢二が生まれ育った藁葺き屋根の「生家記念館」と、自ら設計したアトリエを復元した「少年山荘」からなる分館(夢二生家記念館・少年山荘)があり、原風景と創作の源流を追体験できます。