田中健の結婚史を語るうえで避けて通れないのが、1986年に結婚した女優・古手川祐子との関係です。ふたりは1980年のテレビドラマ『夜の傾斜』での共演をきっかけに交際をスタートさせ、約5年の交際期間を経てゴールインしました。当時、人気絶頂にあったトップスター同士の華燭の典は、ワイドショーや女性週刊誌で大々的に報じられました。
翌1987年には長女である綾乃(元女優・古手川綾乃)が誕生し、一見すると順風満帆な芸能人一家に見えましたが、結婚生活は13年目の1999年に静かに幕を下ろしました。離婚発表会見や当時の報道、双方がのちに明かした証言から浮かび上がる離婚理由は、単一のトラブルではなく複合的な生活環境の変化でした。
最大の要因とされたのが、「仕事と家庭の両立における価値観のズレ」と「自宅建築にまつわる生活感覚の乖離」です。当時、古手川祐子は母親としての役割を果たしながらも主演級女優としてのキャリアを妥協せず、田中健もまたドラマや舞台の過密スケジュールを抱えていました。すれ違いが常態化するなか、都内に建てられた豪華な二世帯住宅の建築計画や巨額のローン返済、維持管理をめぐる意見の食い違いが、夫婦間の精神的バウンダリーを決定的に崩していったと伝えられています。
「お互いに役者として自立しすぎていたがゆえに、相手に甘えることができなくなっていた」——当時の芸能関係者がそう述懐するように、泥沼の不倫劇や金銭トラブルではなく、表現者同士の自我と日常の営みが交錯した結果の、切なくも必然的なピリオドでした。