著者の尾田栄一郎は、読者に強い感情移入を促すキャラクターメイキングにおいて妥協を許さない。週刊少年ジャンプ誌上で連載される『ONE PIECE』は、王道の少年漫画でありながら、権力の腐敗や人種差別、奴隷制度といった重厚な社会問題をバトルファンタジーの枠組みの中に緻密に組み込んできた。
チャルロス聖という徹底的に救いようのない悪役を配置することによって、彼を打倒するルフィたちの行動に圧倒的な正当性と快感が付与される。感情の揺れ幅を最大化させる劇的な演出技法は、集英社が誇る金字塔的作品のストーリーテリングの真骨頂であり、彼というキャラクターの存在なしには成立し得ない心理的効果を生み出している。