社会人サッカー選手たちが年間で最も目の色を変える季節がある。全国社会人サッカー選手権(全社)の県予選、そして天皇杯の出場権を争う鹿児島県サッカー選手権(県知事杯)だ。
ここには地域リーグの雄から、発足したばかりの草クラブ、さらには大学選抜までが入り乱れる。まさに一発勝負のトーナメント。「ジャイアントキリング」の魔力が、グラウンドの隅々にまで張り詰める。格上の大学チームを相手に、社会人チームがベテランの老獪な時間稼ぎと泥臭いセットプレーで1点を守り切る。そんな波乱がここでは日常茶飯事だ。
「プロを食ってやろうなんて大それたことは考えていない。でも、同じサッカー選手として、エリート街道を歩んできた連中に一泡吹かせてやりたいという怨念みたいなものは、間違いなく全員の腹の中にある」
あるミッドフィールダーの言葉は生々しい。勝てば次のラウンドへ進み、負ければ即座にシーズンが終わる。トーナメント特有のヒリつく緊張感は、彼らが日常の業務では決して味わえない劇薬なのだ。