月の土地の購入を検討するうえで、最も理解しておくべきなのが所有権と法律の関係だ。結論を先に言えば、2026年現在において、個人が月の土地を合法的に「所有」することは国際法上認められていない。その根拠として頻繁に引き合いに出されるのが、1967年に発効した「月その他の天体における国家活動を律する条約(宇宙条約)」である。
宇宙条約の第2条は、「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用、占拠その他いかなる手段によっても国家による領有の対象とはならない」と定めている。この規定は国家による領有を禁止したものだが、一般的な法的解釈としては、個人や民間企業による所有権の主張も同様に認められないとされる。つまり、月の土地を販売する会社が発行する「権利書」や「所有権証明書」は、あくまで記念品・ノベルティとしての意味しか持たない。
日本国内の法律においても、不動産登記法に基づく登記は日本の領土内の土地にしか適用されない。月の土地を法務局に登記することは当然ながら不可能であり、民法上の「所有権」も発生しない。専門家の間でも、「月の土地の販売は“所有権”ではなく“命名権”や“記念証明書の販売”と捉えるべき」という見解が一般的だ。
一方で、1979年に採択された「月協定」は月の資源を人類の共同財産と位置づけているが、宇宙開発を進める主要国は批准しておらず、実効性に乏しいのが現状だ。そのため、今後商業的な宇宙開発が進めば、法的枠組みが変わる可能性もゼロではない。とはいえ、現時点で「月の土地を買って所有権を得る」という行為は、法律上の裏付けを欠いていると理解すべきである。