展覧会場や警察署のロビーに掲示される歴代の受賞作品を分析すると、ある共通項が浮かび上がってきます。それは「歩行者の視線を一瞬で奪い、足を止めさせる力」です。街頭に貼られるポスターは、鑑賞者が立ち止まってじっくり鑑賞する絵画ではありません。通行人が通り過ぎるわずか2〜3秒の間に、危険を警告し、防犯意識を喚起する実用デザインが求められます。
全国地域安全運動をはじめとするポスター審査に関わる関係者の講評でも、「細部まで細かく書き込まれた力作」よりも、「明暗の対比がハッキリしており、標語とイラストが一目で連動している作品」が高く評価される傾向が顕著です。視覚心理学における「図と地の分化(Geatalt心理学)」が明確で、何が主役で何を伝えたいのかに迷いがない作品ほど、審査員の採点シートで高得点をマークします。
短時間で入賞レベルまで作品を引き上げる最大の秘訣は、画面の情報量を極限まで削ぎ落とす「引き算の美学」にあります。背景の街並みや複雑な群衆を忠実に描こうとせず、最も警告したい中心モチーフを画面の6割以上の大きさで堂々と配置する。これだけで、鑑賞者の認知負荷が下がり、力強くプロフェッショナルな印象を与えることができます。