赤虎の生態を語る上で、一般の愛犬家が最も驚嘆するのが毛色の変化です。甲斐犬の愛好家コミュニティやSNSの報告において、「生後2ヶ月で迎えた時は真っ黒だったのに、2歳を過ぎたら見事な赤虎になった」という証言が後を絶ちません。
実際、赤虎の子犬期は黒虎と見分けがつかないほど黒く、肉眼ではかすかに耳の後ろや四肢の内側に赤茶色の産毛が混じっている程度です。この現象について、獣医学関係者および保存会のベテラン繁殖家らは「ダブルコート(二重被毛)の換毛サイクルとユーメラニン(黒色素)・フェオメラニン(赤黄色素)の生化学的発現時期のズレ」によるものと説明しています。
赤虎毛の完成には通常、生後2年から3年という歳月を要します。春と秋の換毛期(毛の生え変わり)を何度も繰り返す過程で、アンダーコート(下毛)から鮮やかな赤褐色が立ち上がり、トップコート(上毛)の黒い差し毛が綺麗な虎斑(とらふ)模様を描き出します。日々のブラッシングのたびに野性味あふれるグラデーションへと姿を変えていく過程こそ、赤虎の飼育者が口を揃えて「一生飽きない醍醐味」と評する理由です。