もちろん、ここまでの道のりは平坦ではなかった。既存の法規制や、前例踏襲を重んじる地方自治体の壁は厚かった。当初、実証実験の許可を得るだけでも数ヶ月を要し、行政の担当者からは「前例がない」「セキュリティの保証は」と門前払いされる日々が続いたという。
しかし、彼女は机上の空論で戦うことをしなかった。自ら軽トラックを運転し、地元の寄り合いに何度も足を運び、住民たちとお酒を酌み交わしながら信頼を勝ち得ていった。住民側から「これをやらせてくれ」という声が上がった時、ようやく重い行政の腰が動いた。ボトムアップの熱量が、トップダウンの硬直を打ち破った瞬間だった。