まだ暗い早朝、活気に満ちた豊洲市場の喧騒の中に大将の姿があった。長年の信頼関係によって結ばれた仲卸との静かな対話から、その日の極上ネタが選ばれる。どんなにブランド化された魚であっても、自らの目と指先で納得がいかなければ仕入れることはない。季節の移ろいを感じ取れる極上の天然物だけが、店のつけ台へと運ばれていく。
鮪の脂の乗り具合や小肌のしめ加減、海胆の濃厚な甘みなど、素材のポテンシャルを極限まで引き出すための仕込みは、市場から戻った直後から始まる。職人の研ぎ澄まされた感覚と妥協なき眼利きこそが、名店たる所以を支える揺るぎない土台なのだ。