日活の看板女優として映画界の頂点へと駆け上がっていた吉永小百合と、潮来笠で鮮烈なデビューを飾りトップ歌手の地位を確立していた橋幸夫。ビクターレコードの専属であった若き2大スターの共演は、当時の芸能界における一大プロジェクトとして始動しました。
しかし、この歴史的デュエットには「同じスタジオで一緒に歌っていない」という有名な裏話が存在します。連日の映画撮影で分刻みのスケジュールに追われていた吉永と、全国巡業とステージに奔走していた橋の日程を合わせることは物理的に不可能でした。そこで採用されたのが、当時としては極めて異例だった多重録音(別録り)の手法です。
先に橋幸夫がメインパートと掛け合いのリズムを吹き込み、その音源を聴きながら吉永小百合が自身のパートを重ねる形で収録が敢行されました。顔を突き合わせてのセッションが叶わない制約の中で、互いの声の質感と息づかいを信じて生み出されたハーモニーは、奇跡的なまでの清涼感と温かさを生み出し、レコードの溝へと刻み込まれたのです。