「鈴なりの花を摘み」という鮮烈な歌い出しから始まる歌詞は、日本語の持つ響きの美しさを極限まで高めた文学的表現に満ちています。描かれているのは、満開の草花が咲き乱れる季節の歓びと、それと表裏一体をなす人生の移ろい、そして誰しもが抱える別れや哀愁です。
春の訪れとともに咲き誇る花はやがて散り、季節は秋の月や冬の雪へと移り変わっていく——。仏教的な諸行無常の観念をベースに敷きながらも、歌詞全体を支配しているのは絶望ではなく、旅路の先にある希望と他者への慈しみです。桑田佳祐特有の叙情詩的アプローチが、原由子の飾り気のないボーカリゼーションによって聴き手自身の個人的な追憶へと昇華されます。
さらに音楽構造の側面から分析すると、本作のメロディラインには伝統的なヨナ抜き音階(ファとシを抜いた五音音階)の要素が巧みに組み込まれています。西洋的なコード進行を用いながらも、メロディの根幹にオリエンタルな音階を配置することで、聴き手は無意識のうちにDNAレベルの懐かしさと安心感を抱く仕掛けとなっているのです。