SNSやネットコミュニティで定期的に話題となるのが、「マリーちゃんは映画の主役ではない」という噂です。結論から言えば、この指摘は物語の構造上、紛れもない事実です。
1970年12月に全米公開された『おしゃれキャット』の映画あらすじを振り返ると、物語の中心軸はマリー単体ではなく、母猫であるおしゃれキャット ダッチェスと、野良猫のトーマス・オマリーによる大人のロマンス、そして遺産を狙う邪悪な執事エドガーによる誘拐事件からの脱出劇です。ウォルト・ディズニーが生前に企画承認した最後の長編アニメーションとしても名高い本作において、マリーは「ダッチェスが溺愛する3匹の子猫のうちの1匹」というアンサンブルキャストのポジションでした。
ではなぜ、脇役の1匹に過ぎなかったマリーが、これほど突出した知名度を獲得したのでしょうか。そこには日本独自のキャラクター消費文化と巧みなマーケティング戦略が存在します。
2000年代初頭、日本の女子中高生や若い女性の間で「白×ピンク」を基調としたガーリーカルチャーが爆発的な流行を見せました。ウォルト・ディズニー・ジャパンはこの現象に着目し、映画本編の文脈からマリーを独立させ、単独のファッションキャラクターとしてプロモーションを展開。サンリオのハローキティやマイメロディに親しんできた日本の女性層に、ディズニーのクラシックな高級感と子猫のコケティッシュな愛らしさが完璧に刺さり、「映画は観たことがないけれどマリーちゃんは大好き」という特異なファン層が形成されたのです。