六波羅蜜寺が誇る彫刻群の多くは、鎌倉彫刻の頂点を築いた運慶一門の手によるものだ。真言宗智山派の名刹として受け継がれてきた寺宝には、平安後期の優美な貴族趣味から、生々しい肉体性と心理描写を重んじる鎌倉リアリズムへの劇的な転換点が見て取れる。
空也上人立像を手がけたのは運慶の四男・康勝とされる。骨張った鎖骨の隆起や喉仏の質感、風をはらむ衣のひだの表現に至るまで、解剖学的な観察眼と卓越した彫技が注ぎ込まれている。玉眼(ぎょくがん)と呼ばれる水晶を瞳にはめ込む技法が、像に人間離れしたリアリティと霊性を同時に宿らせている。
堂内にはほかにも運慶の真作とされる地蔵菩薩坐像や、閻魔王坐像など、人間の生死を真正面から見据えた異色の傑作が居並ぶ。救済と断罪、生と死。彫刻家たちが木肌に刻み込んだ剥き出しの感情は、今も色あせない。