ベースボール・マガジン社をはじめとする専門誌や重厚なスポーツノンフィクションの紙面では、淡口憲治が背負った「背番号35」の物語が幾度となく活写されてきた。主役のスター選手たちがスポットライトを浴びるグラウンドで、影の立役者として泥臭く勝利に貢献した男のドラマは、読み手の心を激しく揺さぶる。
日本野球機構が歩んできた長い歴史の中で、彼のような「スペシャリスト」が果たした役割は計り知れない。どんな重圧のかかる場面でも感情を表に出さず、ただ一振りにすべてを賭ける。そのストイックな姿勢は、数字の羅列だけでは決して測ることのできないプロ野球の奥深い魅力をいまに伝えている。