壮大な景観美だけでなく、足元に揺れる小さな名もなき草花に目を凝らす面白さを教えてくれたのが、日本の植物学の父・牧野富太郎だ。彼が生涯をかけて愛した植物の世界は、豪華絢爛な花園だけではなく、道端にたくましく根を張る雑草の営みの中にこそ宿っている。
週末に近郊の植物園を訪れたなら、ぜひ視線をぐっと下げて歩いてみてほしい。花壇の主役たちを取り囲む下草、木肌を覆う瑞々しい苔、季節の変わり目を告げる小さな蕾。牧野が遺した精密な植物図譜に思いを馳せながら観察すると、単なる風景だった緑の塊が、個々の意志を持った生命の集合体として鮮烈に立ち上がってくる。
知識の有無は関係ない。「この葉はなぜこんな形をしているのだろう」「どんな香りを放っているのか」。五感を研ぎ澄まして草花と対話する時間は、スマートフォンのブルーライトで疲弊した意識を驚くほど軽やかにリセットしてくれる。