実際に早期退職制度を利用して会社を去った人々は、どのような現実に直面しているのでしょうか。大手掲示板やSNS、当編集部が実施した独自ヒアリング調査からは、退職前の理想とはかけ離れたリアルな葛藤と苦悩が浮かび上がってきます。
大手通信会社を51歳で早期退職した男性Aさん(退職金・割増金計3,200万円受給)は、自らの選択を振り返り次のように述懐しています。
「朝起きて満員電車に乗る必要がなくなり、最初の半年間は解放感に浸っていました。しかし1年が過ぎると、平日昼間に街を歩いている自分に強烈な居心地の悪さを覚えるようになったのです。平日は友人も仕事をしており、趣味のゴルフや読書も毎日続ければ単なる退屈な時間つぶしに変わる。何より、社会から完全に切り離され、自分の存在価値が消え失せてしまったような孤独感が最も堪えました」
当編集部がまとめた50歳早期退職で後悔する理由と失敗事例の上位には、以下の3つの典型パターンが並びます。
- 資産の「取り崩し恐怖症」:給与という毎月の確実な入金が途絶えると、1円でも口座残高が減っていく光景に耐えられなくなり、日々の食費や光熱費の支払いにすら過度なストレスを感じて生活水準を極端に切り詰めてしまう。
- 再就職市場の冷徹な壁:「50代前半ならこれまでのマネジメント経験を活かして年収600万円程度で再就職できるだろう」と高をくくっていたものの、書類選考すら通過しない現実に直面する。
- 家庭内不和と居場所の喪失:四六時中夫が自宅のリビングにいることで配偶者に過度なストレス(いわゆる主人在宅ストレス症候群)がかかり、家庭内の空気が険悪化して別居や熟年離婚に至る。
特に見通しを誤りがちなのが、50代早期退職後の再就職事情と転職難易度です。人手不足が叫ばれる昨今の労働市場ですが、企業が血眼になって求めているのは20代〜30代の実務人材や特定のIT・エンジニア専門職です。50代のジェネラリストや管理職経験者が応募できる求人は極めて限定的であり、ハローワークや転職エージェント経由で決まる職種の多くは警備、清掃、物流ドライバー、介護などの現場職が中心となります。再就職を果たしたとしても、年収は前職の半分〜3分の1(年収250万〜350万円程度)に急落するのが冷厳な相場です。