「自分だけ臭い玉ができる…」と悩む人にとって、臭い玉ができない人の存在は不思議でなりません。しかし、医学的な見地から見れば、その理由は極めて明快です。膿栓の正体は、喉の左右にある口蓋扁桃(こうがいへんとう)に集まる細菌の死骸、剥がれ落ちた粘膜の上皮細胞、そして微細な食物残渣が凝縮した塊です。これが生じるか否かを左右する最大の要因が、扁桃腺の陰窩と喉の構造にあります。
口蓋扁桃の表面には「陰窩(いんか)」と呼ばれる無数の微細な裂溝や窪みが存在します。この陰窩の深さや形状には指紋のような個人差があり、臭い玉ができない人の特徴を観察すると、陰窩の開口部が極めて浅いか、あるいは平坦で陰窩そのものの容積が小さい傾向が顕著です。陰窩が浅ければ、侵入したウイルスや細菌をリンパ組織が攻撃して退治した後も、残骸がポケットの底に停滞することなく、嚥下運動とともに胃の中へとスムーズに流し出されます。
これに対し、幼少期に慢性的な扁桃炎を繰り返した経験がある人は、炎症の修復過程で陰窩の奥深くに線維化が生じ、複雑に入り組んだ「深い洞窟」のようなポケットが形成されやすくなります。膿栓の原因とメカニズムにおいて、この入り組んだ陰窩こそが細菌にとって格好の繁殖シェルターとなり、排出されない老廃物が雪だるま式に固まって石灰化し、臭い玉へと変貌を遂げるのです。
さらに見逃せないのが、唾液分泌量と口腔内フローラの影響です。唾液にはリゾチームやラクトフェリン、IgAといった強力な抗菌物質が含まれており、喉の粘膜を常に循環しながら自浄作用を発揮しています。臭い玉ができない体質の人は、安静時唾液の分泌量が豊富で、口腔内が常に潤いに満ちています。乾燥を好む嫌気性菌の増殖が抑えられているため、膿栓の核となるプラーク状物質の発生自体が最小限に抑えられているのです。