仏教の伝来もまた、鬼のイメージを決定づける大きな転換点となりました。仏教の世界観において、鬼は地獄で亡者を苛む獄卒(阿防羅刹など)として描かれる一方、教えを守護する「夜叉」や「羅刹」といった鬼神(きしん)としても位置づけられます。
昔話や節分の定番である「赤鬼」と「青鬼」、さらには黄・白・黒を加えた五色の鬼には、仏教の「五蓋(ごがい)」と呼ばれる人間の煩悩に基づく明確な意味の違いが存在します。
・赤鬼:「貪欲(強欲・執着)」の象徴。人間の尽きない欲望や渇望を表す。
・青鬼:「瞋恚(怒り・憎しみ・悪意)」の象徴。冷静さを失わせる激しい怒りを表す。
・黄(または白・黒)鬼:「愚痴(無知)」「心の乱れ」「猜疑心」など、人間を苦しめる精神的な弱さを象徴。
節分の豆まき(追儺の儀式)において「魔を滅する(魔滅=まめ)」として豆をぶつける行為は、単に外の怪物を追い払うだけでなく、自らの心の中に巣食うこれら五つの煩悩を祓い清めるという意味合いが込められています。