彼の音楽人生の皮切りとなったのは、中学時代におけるあまりにも有名な「勘違い」のエピソードだ。当時から大の魚好きだった少年は、校内の部活動一覧に書かれた文字を見て胸を躍らせた。「すいそうがくぶ」——彼が頭の中で思い描いていたのは、無数の大きな水槽が並び、色とりどりの魚たちが泳ぐ「水槽学」の部活動だったのだ。
期待に胸を膨らませて音楽室の扉を開けた彼を待っていたのは、水槽ではなく、金管楽器や木管楽器がズラリと並ぶ吹奏楽の世界だった。普通であればガッカリして立ち去るところだが、ここからの展開が彼の非凡さを物語っている。目の前で奏でられた音色の響きと楽器自体の美しさに一瞬で魅了された彼は、そのまま入部を決意。魚への愛情と同じベクトルで管楽器の世界へと深く没入していくこととなったのである。