佐野浅夫の功績は『水戸黄門』にとどまらない。同じくTBSテレビを代表する長寿時代劇『大岡越前』においても、彼は極めて重要な役柄を演じ、作品の深みを支え続けた。
加藤剛が演じる名奉行・大岡忠相を取り巻く人間ドラマの中で、佐野の見せる重厚かつ滋味あふれる芝居は、物語に圧倒的なリアリティを与えていた。正義とは何か、法と人情の板挟みの中でどう生きるべきか。そうした重厚なテーマを描くナショナル劇場において、彼の存在は不可欠な「楔(くさび)」であった。
当時の時代劇制作の現場は、映画黄金期を支えた職人監督やスタッフがしのぎを削る熱気に満ちていた。TBSテレビが誇る二大時代劇で中心的な役割を果たした佐野は、日本のテレビドラマ史における職人芸の到達点とも言える名演を遺したのだった。