最高裁判所での逆転敗訴を経て、長男である一澤信太郎の立場は決定的なものとなった。経営権を獲得する道を完全に絶たれた彼は、一澤帆布工業株式会社の役員を退任し、老舗の経営およびアパレル・帆布製品製造業の現場から全面的に撤退することを余儀なくされた。
裁判結末後の信太郎は、かつて勤務していた金融機関での経歴や個人の生活へと戻り、メディアの取材に対しても固く口を閉ざすようになった。京都の街やアパレル業界の表面から完全に身を引いた彼は、現在も静かな隠遁生活を続けているとされる。かつてブランドの存続を揺るがす中心人物であった男は、法廷の争いが終結したことで自らの足跡を消し、穏やかな日常のなかで余生を過ごしているのが知られざる真相である。