パーキングブレーキ(駐車ブレーキ)とは、停車中および駐車中の車両が勝手に動き出さないよう車輪を機械的・物理的に固定するための保安装置です。道路運送車両法および保安基準によってすべての自動車への設置が義務付けられており、走行中に踏み込んで四輪すべてを減速・停止させる主ブレーキとは明確に区別されています。
多くのドライバーが疑問を抱くのが、フットブレーキとの役割の違いです。走行中に使用するフットブレーキは、ペダルを踏み込んだ力を油圧倍力装置(マスターバック)によって数十倍に増幅し、前後四輪すべてのディスクやドラムに均等かつ強力な摩擦力を伝えて車を減速させます。これに対し、パーキングブレーキは基本的に「後輪の二輪」だけを物理的にロックする設計が採用されています。走行中の減速ではなく、停止状態を長時間持続させるために特化した仕組みです。
また、日常会話で混同されやすい「サイドブレーキ」という呼称ですが、これはかつて運転席と助手席の「横(サイド)」に手動レバーが設置されていたことに由来する通称です。構造や保安基準上の正式名称はあくまでパーキングブレーキであり、サイドブレーキとの違いは本質的には呼び名と配置場所の歴史的変遷にすぎません。昭和から平成にかけて主流だった手引きレバー式に加え、ミニバンや軽自動車で普及した足踏みペダル式、そして中央コンソールの小型スイッチで操作する電動式など、時代とともに操作インターフェースが姿を変えてきました。
車輪を固定する内部メカニズムには、ドラムブレーキとディスクブレーキの構造の違いが密接に関わっています。一般的な乗用車では、後輪の内側に小型のドラムブレーキ機構を組み込んだ「インナードラム式(ドラムインディスク)」や、ディスクブレーキのキャリパーピストンを直接押し込んでパッドをディスクローターに密着させる機構が採用されています。ドラム式はくさび効果(自己倍力作用)が働くため強力な保持力を誇る一方、熱がこもりやすい特性があります。ディスク式は放熱性に優れるものの保持力確保に工夫が求められるなど、車種の重量やコストに応じて緻密に設計が分かれています。