原作第310話において描かれた尾形百之助の結末は、連載完結から時間が経過した2026年現在も読者の間で深く語り継がれています。五稜郭から疾走する軍用列車内での最終決戦、尾形はアシㇼパが放った矢(誤射によるトリカブトの毒矢)を肩に受けます。
致死性の毒が回り混濁する意識の中、杉元がアシㇼパに毒を吸い出させようとする姿を見た尾形は、自身の銃口を自らの顎の下へと向けます。そこで尾形の脳裏に現れた勇作の幻影は、以前のような威圧的な呪いではなく、穏やかに微笑んでいました。
尾形はこの極限状態において、一つの決定的な真理に至ります。「自分は勇作を殺したことに罪悪感を抱いていた。罪悪感を抱くということは、自分は欠落した化け物ではなく、勇作を愛し、勇作からも愛されていたのだ」という事実です。愛を知るまっとうな人間であったという認識は、彼がこれまで築き上げてきた冷徹なアイデンティティを崩壊させると同時に、魂の救済をもたらしました。
自らの足の指で引き金を引いた直前、尾形が遺した最後のセリフ――「バカが……」。この言葉は、毒の苦痛から逃れるためでも杉元への悪態でもなく、最も求めていた愛をずっと手元に持っていたにもかかわらず、自らそれを破壊し遠回りし続けた自分自身への嘲笑と、どこか憑き物が落ちた安堵が混ざり合った至高の独白でした。