築地や豊洲のイメージでこの市場を歩くと、確実に脳がバグる。ここに並ぶマグロの9割以上は、一度も凍らせていない「生」なのだ。近海パヤオ(浮魚礁)漁業の基地である泊港だからこそ実現する、完全フリーズドライ無縁の世界。薄いピンク色ではなく、ねっとりと赤く濡れたような肉質は、箸で持ち上げた瞬間に違いがわかる。
「本州で食べるマグロはカチコチに凍らせて解凍したものが主流だが、うちのは海から上がって一度も0度以下になっていない。水分が抜けていないから、舌に乗せた瞬間の脂の溶け出し方がまるで違う」と、卸歴30年のベテラン職人は包丁の手を止めずに語る。