土師孝也のキャリアを語る上で避けて通れないのが、故アラン・リックマンが演じたセブルス・スネイプ役の吹き替えだ。映画全8作を通してスネイプの複雑な心情を見事に表現しきった演技は、日本語吹き替え版のクオリティの高さを世界に証明した傑作として語り継がれている。
静かで冷徹な声のトーンの裏に隠された、一途で深い愛。単に「嫌われ者の教師」として始まったキャラクターが、物語のクライマックスにかけて見せる悲哀と覚悟を、声の微小な揺らぎだけで描き切った。映画ファンからは「アラン・リックマン本人の声以上にスネイプの感情が伝わってくる」とまで評された。言葉を詰め込まず、間(ま)を贅沢に使うその演技手法は、海外作品の日本語版制作において一つの金字塔となった。