『エヴァンゲリオン』シリーズの生み出し親である庵野秀明監督、および作品の著作権を管理する株式会社カラーの対応もまた、極めて異例かつ迅速だった。ネット上で自社の知的財産(IP)が無断で防災・節電運動に流用される中、同社は法的な権利主張を一切行わず、むしろ市民の自発的な動きを温かく見守る姿勢を貫いた。
後に株式会社カラーの関係者が明かしたところによれば、庵野秀明監督をはじめとする制作陣は、自らの作品が予期せぬ形で社会防衛に寄与している事態に対し、深い敬意と困惑の混ざり合った感情を抱きつつも、著作権侵害としての差し止めを行わない判断を下したという。この寛容な姿勢こそが、運動の萎縮を防ぎ、さらなる善意の輪を広げる結果となった。
日本の作品やアニメーション産業が持つ文化的影響力が、エンターテインメントの枠組みを超えて直接的に社会課題の解決へ介入し得ることが証明された一章である。創作物と現社会の境界線が溶解したこの事例は、コンテンツビジネスにおける危機管理や著作権運用の新たな指針として、現在でも研究対象となっている。