中野良子といえば、高倉健と共演した伝説的映画『君よ憤怒の河を渉れ』で中国をはじめとするアジア全域で社会現象を巻き起こした人物だ。彼女がスクリーンにまとう空気は、日本の映画黄金期が持っていた独特の熱量と泥臭さを今に伝える。その眼差し一つで、セリフ以上の感情を観客に伝える技術は健在だ。
今回の役どころは、過去の闇を抱えながら地方都市でひっそりと暮らす謎の老女。一見すると穏やかな日常の中に、時折見せる冷徹な光。彼女の演技は、作品全体の背骨として機能している。現場スタッフは「彼女がカメラの前に立つだけで、空気の密度が変わる」と口を揃える。