28歳という若さでの引退に対し、一部のネットコミュニティやSNS上では「まだ治療に専念すれば復活できたのではないか」「師匠問題や部屋移籍のストレスが影響したのではないか」といった臆測が飛び交いました。貴乃花部屋の消滅に伴う千賀ノ浦部屋(現・常盤山部屋)への移籍など、激動の現役時代を過ごした彼だけに、そうした噂が生まれる土壌があったことは事実です。
しかし、取材の現場で見えてくる真実はまったく異なります。押し相撲専門力士の頸椎損傷は、四つ相撲の力士とは比較にならないほど致命的です。頭部からの衝撃がダイレクトに頸髄へ伝わるため、一度ヘルニアや骨棘(こつきょく)による神経圧迫が起きると、再発率は極めて高くなります。
「手術をして休場し、幕下からやり直す選択肢」を望む声もありましたが、関係者によると、神経の麻痺症状が出ている段階での相撲の継続は、最悪の場合、下半身不随や呼吸不全のリスクすら伴う状態でした。現役を退いたのは決して精神的な挫折や人間関係の軋轢ではなく、医学的見地から導き出された「生きるための必然的な決断」だったのです。