消費者が最も不安を抱く「発がん性」という言葉の裏には、どのような科学的背景があるのだろうか。世界保健機関傘下の国際がん研究機関(IARC)は、二酸化チタンを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」グループ2Bに分類している。これだけを聞くと恐ろしい毒性を想像しがちだが、分類の根拠を冷静に読み解く必要がある。
この評価の主たる根拠は、実験動物に高濃度の微粒子粉塵を長期間「吸入」させた実験結果に基づいている。粉塵を肺の奥深くまで吸い込むことで生じる持続的な炎症反応が問題視されたのであり、口から食べたり肌に塗ったりする日常的な暴露形態とは次元が異なる。
日本の厚生労働省や米国の食品医薬品局(FDA)も、厳格な規格基準を定めた上で、適切な使用における安全性を確認している。厚生労働省は労働環境における粉塵吸入防止策として作業者の防塵マスク着用や換気基準を強化する一方、認可された食品添加物としての使用については、通常の食生活で直ちに健康リスクが生じるものではないとの立場を維持している。