一青窈の生い立ちを紐解く上で欠かせないのが、台湾の裕福な名門一族との繋がりだ。彼女の父親は、台湾の九份(キュウフン)金鉱開発などで知られる五大財閥の一つ、顔家の実業家・顔恵民氏である。幼少期を台北で過ごした彼女の本名は、顔窈(イエン・ヤオ)といった。
幼い頃に父親を病気で亡くし、思春期に母親も旅立つという壮絶な別れを経験した彼女たち姉妹。エッセイストや歯科医師、女優として多彩に活躍する姉の一青妙(ひとと たえ)とともに、母方の姓である「一青」へと改姓した。ふたつの国と文化の狭間で揺れ動いた幼少期の記憶や絆は、彼女の言葉の端々に深い情緒として刻み込まれている。