大人が水泳を始めるにあたり、最も大きな心理的障壁となるのが「カナヅチなのに参加して浮かないか」「水着姿を見られるのが恥ずかしい」という自意識です。しかし、実際の指導現場に足を運ぶと、その懸念が取り越し苦労であることがよく分かります。
大手フィットネスクラブの指導員への取材によると、新規で成人向け水泳クラスに申し込む受講生のうち、およそ6割以上が「25メートルを一度も泳ぎ切ったことがない」「息継ぎの仕方が分からない」という完全な初心者です。中には「子どもの頃に溺れかけて以来、水に顔をつけることすら恐怖」と語る受講者も珍しくありません。
現場の受講生からは次のような声が寄せられています。
「30代半ばまでカナヅチだったため、最初はロッカールームからプールサイドに出るだけで足がすくみました。でも、初心者コースに入ると自分と同じようにビート板にしがみついている同世代やシニアばかり。誰も他人の泳ぎを見る余裕などなく、インストラクターの指示に集中しているため、自意識過剰だったとすぐに気づきました」(30代男性・IT企業勤務)
「産後太りと腰痛を解消したくて入会しました。露出の少ないセパレート型のフィットネス水着を着れば体型はほとんど目立ちませんし、水の中に入ってしまえば首から上しか見えません。もっと早く始めればよかったと実感しています」(40代女性・主婦)
スクール側も初心者の心理的ハードルを熟知しており、水深を浅く調節するフロア台を沈めたり、歩行練習や水慣れから段階的に進めるカリキュラムを用意しています。周囲は「泳ぎを競い合うライバル」ではなく「水への苦手意識を克服しようとする同志」であるため、気後れする必要は全くありません。