『ブギウギ』の成功を決定づけた最大の要因は、キャスト陣の圧倒的なリアリティと役への憑依にあります。2471人が参加したオーディションから選出された趣里は、幼少期からの本格的なクラシックバレエ経験で培った体幹と表現力、そして過酷なボイストレーニングによって笠置シヅ子特有のハスキーで爆発的な歌唱スタイルを体現しました。
関係者への取材によると、ステージシーンの撮影では口パクではなくほぼ全編で趣里本人の生歌収録が敢行され、スタジオ内はライブハウスさながらの熱気に包まれていたといいます。
そして、音楽の師である羽鳥善一を演じた草彅剛の存在感は特筆に値します。常に音楽への純粋な情熱と狂気を漂わせ、「トゥリー、ヤァー!」という独特の指揮スタイルでヒロインを鼓舞する羽鳥のキャラクターは、草彅の天衣無縫な演技プランによって唯一無二の輝きを放ちました。服部良一の実孫である音楽監督・服部隆之が「祖父がスタジオに降りてきたかのようだ」と語ったエピソードは、制作現場の結束力を象徴しています。
さらに、鈴子の生涯のライバルであり心の友となった茨田りつ子(モデル:淡谷のり子)を演じた菊地凛子、温かくも切ない家族愛を体現した両親役の柳葉敏郎と水川あさみ、幼馴染のタイ子を繊細に演じた日本舞踊家・藤間爽子など、実力派キャストが織りなす重厚なアンサンブルがドラマの奥行きを決定づけました。