自己啓発書やネット空間では長年、「揺るぎない天職を見つけよ」「大きな夢に向かって自己実現せよ」という言説が溢れかえってきました。しかし、これこそが多くの人を精神的疲弊に追い込む最大の認知の歪みです。
本来、自己実現 幸せの定義は他者と比較して誇示するようなトロフィーではありません。心理学者アブラハム・マズローが晩年に提唱した「自己超越」の領域では、自己顕示を超えて、ただ世界や他者と調和している状態そのものが至福であると位置づけられています。
「確固たる生きがいがなければ人生は無価値である」という極端な二元論は、マーケティングや商業主義が作り出した幻想に過ぎません。生きがいとは探検隊のように遠くへ探しに行くものではなく、足元にある手触り感のある日常をどう味わうかという「態度の問題」なのです。