タレントが本格的なアスリートとして競技生活を送ることは、想像を絶する困難を極めた。顔に傷を負えばタレント活動や演技の仕事に支障が出る。多忙なテレビ収録の合間を縫ってトレーニング時間を確保することは至難の業であり、所属する吉本興業にとってもスケジュールの繰り回しやリスク管理は前代未聞の課題だった。
それでも彼女が引き下がらなかったのは、リングの上では「タレントのしずちゃん」ではなく、「一人のボクサー・山崎静代」として評価されるという厳粛な世界に救われていたからかもしれない。芸能界の華やかさと、スポーツ界のストイックな孤独。その二つを愚直に行き来した経験が、人間としての深みを形作った。