胡蝶しのぶと童磨の因縁は、物語の開始よりも数年前に遡ります。しのぶの実姉であり、前・花柱であった胡蝶カナエの命を奪った張本人こそが、上弦の弐である童磨でした。カナエは死に際に「童磨の首を斬ることは諦めて普通の女の子として生きてほしい」としのぶを気遣いましたが、しのぶはその遺志を背負い、鬼への怒りと復讐心を笑みの仮面の下に隠して生きる道を選びます。
童磨という鬼の最大の特徴は、「完全な感情の欠落」にあります。人間の頃から喜怒哀楽を理解できず、万世極楽教の教祖として信者を喰らうことを「救済」と信じ込んで疑いません。特に栄養価が高いとされる若い女性を好んで喰らう童磨にとって、カナエもしのぶも単なる「美味しい救済対象」に過ぎませんでした。
憎悪を滾らせるしのぶに対し、童磨はどこまでも親しげで軽薄な態度を崩しません。この絶対的に噛み合わない価値観こそが、二人の関係性に横たわる決定的な断絶でした。