犬の驚くべき身体能力の中でも、とりわけ突出しているのが嗅覚です。犬の鼻腔内には、におい物質をキャッチする受容体を備えた「嗅上皮」が広く張り巡らされており、その面積は人間の約10〜50倍に及びます。嗅覚受容細胞の数も人間が約500万個であるのに対し、犬種によっては2億〜3億個以上存在し、特定のにおいに対する感度は人間の100万倍から最大1億倍に達します。
さらに犬には、通常の鼻腔とは別に「ヤコブソン器官(鋤鼻器)」と呼ばれるフェロモン感知専用の器官が備わっており、空気中の微細な化学物質から相手の感情状態、性別、体調の変化まで瞬時に把握しています。散歩中のクン活(におい嗅ぎ)は、人間にとっての新聞やSNSをチェックする行為そのものであり、過度に制止することは犬の知的好奇心と脳の刺激を奪う結果につながります。
また、五感の鋭さと表裏一体の関係にあるのが睡眠時間と健康サインです。成犬の平均睡眠時間は1日あたり12〜15時間、子犬やシニア犬では18〜20時間が必要とされています。犬の睡眠は約8割が浅い「レム睡眠」であり、周囲の物音に対して即座に反応できる半覚醒状態で過ごす時間が大半を占めます。
「最近、呼んでも起きない」「寝床から出るのを極端に嫌がる」「逆に夜間にウロウロと歩き回り眠らない」といった睡眠サイクルの乱れは、関節痛、認知機能不全症候群(犬の認知症)、心疾患などの初期症状であるケースが多いため、日頃から愛犬の睡眠パターンを客観的に記録しておくことが重要です。