日本メディアがこれまで十分に光を当ててこなかった側面に、彼が背負い続けた精神的葛藤がある。日本生まれでありながら韓国籍を保持し続けた決断。それは決して平坦な道ではなかった。打席に立てばスタンドからの心ない野次が飛び交う時代。それでも張本勲は自らのルーツを隠すことなく、むしろ誇りとして胸を張った。
自らのアイデンティティを巡る葛藤は、彼をさらなる高みへと追い込む原動力となった。圧倒的な成績を残すことでしか自らの存在を証明できないという悲壮感。その覚悟こそが、日本プロ野球機構(NPB)の歴史において前人未到の通算最多安打記録を生み出したのだ。