1994年4月27日、南アフリカ史上初となる全人種が参加した総選挙が実施されました。有権者は何キロメートルにも及ぶ長蛇の列を作り、自らの意思で一票を投じました。選挙の結果、ANCが圧倒的な勝利を収め、同年5月にネルソン・マンデラが南アフリカ初の黒人大統領に就任します。デクラークもまた、第2副大統領として新政権を支える道を選びました。
就任式でマンデラは、多様な民族が共生する「虹の国(レインボー・ネイション)」の建設を力強く宣言。白人に対する報復を一切禁じ、融和の象徴として1995年のラグビーワールドカップ自国開催を成功に導くなど、国民統合に心血を注ぎました。
その象徴的な試みが、ノーベル平和賞受賞者であるデズモンド・ツツ大主教を委員長として設置された真実和解委員会(TRC)です。「告白による赦し」を原則に掲げ、過去の人権侵害の加害者が真実を包み隠さず証言することを条件に恩赦を与えるという、世界でも前例のない司法モデルを提示しました。完全な正義の実現には賛否両論があったものの、復讐の連鎖を断ち切り国家の崩壊を防ぐ防波堤として機能しました。