バッテリーが弱ってセルが使えない朝、最後の命綱となるのがキックペダルです。しかし、やみくもに蹴り続けても足が疲れるだけでエンジンは目覚めません。プロが現場で実践する原付のエンジン始動のコツ(冬編)を押さえましょう。
まず大前提として、原付が押しがけできない理由を理解しておく必要があります。一般的な原付スクーターは無段変速機(CVT)と遠心クラッチを採用しており、タイヤが外から回ってもクラッチが繋がらず、クランクシャフトを回転させられません。ギア付きバイクと違って押しがけは物理的に不可能です。頼るべきはキックペダル一択となります。
キックペダルを踏み込む際の確実な手順は以下の通りです。
① センタースタンドを確実に立てる:車体を安定させ、後輪を浮かせた状態を作ります。
② キーをONにし、キックペダルをゆっくり踏み下ろす:カチッとした重みを感じる位置(圧縮上死点)を探します。
③ ペダルを一番上まで戻す:ピストンが圧縮行程の直前にある状態で構えます。
④ アクセルは絶対に回さず、全体重を乗せて一気に踏み抜く:足先だけでなく、膝と腰の重みを使って一気に底まで振り下ろします。
もし旧型のキャブレター車であれば、キャブレターのチョークの冬の使い方が命運を分けます。チョークレバーをしっかり引き、吸入空気を絞って混合気を濃くした状態でキックを試みてください。初爆(ボボッという音)が来たらチョークを少し戻し、緩やかにアクセルを煽ってアイドリングを安定させます。
FI車の場合は、アクセルを少しでも開けるとコンピューターが燃料を過剰噴射してプラグをかぶらせてしまいます。「アクセル全閉・圧縮位置からの一撃」が鉄則です。