なぜ、織田裕二の中継はあれほどまでに人々の胸を打ったのか。その根底には、徹底した現場主義と取材への真摯な姿勢がある。『踊る大捜査線』で見せた刑事・青島俊作の泥臭い信念と同様に、織田はキャスター就任が決まると自ら世界各地のグランプリや合宿所へと足を運んだ。
台本をなぞるだけのリポーターを彼は拒んだ。選手一人ひとりの骨格、フォームの癖、過去の怪我の履歴までをノートにびっしりと書き込み、海外の無名選手であっても直接英語でインタビューを敢行した。その情熱に、世界のトップアスリートたちも心を開いた。単なる陸上競技の紹介者ではなく、走る者、跳ぶ者、投げる者の孤独と苦悩を我がことのように共有していたからこそ、スタジオでの絶叫には嘘偽りのない説得力が宿っていたのである。