本作の最大の武器は、緻密に練り上げられたプロットと、一切の妥協を排したキャスティングの妙にあります。物語の中心となるのは、私立中高一貫校「北沢学園」の学長を務める父・北沢泰蔵(中村梅雀)を頂点とした、絵に描いたようなスーパーエリート一家です。
長男の博文(小澤征悦)は天才的な手腕を持つ心臓外科医、長女の知晶(波瑠)は敏腕弁護士、そして主人公である次男の秀作(山田涼介)は東京大学法学部を卒業して警視庁に入庁したエリート警察官(警部補)。一見すると非の打ち所がない完璧な家族ですが、その内実は「世間体と名誉を守るためなら法をも犯す」という極めて歪んだ倫理観の持ち主たちでした。
『もみ消して冬』のあらすじは、父親である泰蔵が教え子である若い女性に手を出して脅迫されたり、博文が同僚の医師への愛憎からトラブルを起こしたりといった、北沢家を揺るがす不祥事の数々を、家族会議という名の密談によって次男の秀作に「犯罪スレスレの手口でもみ消させる」という構造で展開します。
当時の制作発表記者会見において、山田涼介は「とにかく感情の起伏が激しく、自分のモノローグ(心の声)と表情のギャップに全力で挑んでいる」と語っていました。その言葉通り、家族からの理不尽な命令に怯え、警察官としての良心と家族愛の間で激しく苦悩しながら見せる秀作の「苦悶の表情」は、本作の代名詞となりました。また、Hey! Sɑy! JUMPが歌う主題歌「マエヲムケ」のアップテンポで力強いビートが、不条理な状況へ立ち向かわざるを得ない秀作の疾走感と完璧にシンクロし、ドラマの熱量を大きく引き上げました。
脇を固める登場人物たちも強烈な個性を放っています。北沢家に仕える執事の小岩井凛治(浅野和之)や見習い執事の楠木松也(千葉雄大)、知晶に思いを寄せる警視庁の後輩・尾関光希(小瀧望)など、コメディのテンポを加速させる布陣が隙間なく配置されていました。