一見すると突飛な設定に思える「カナダの雪景色×ペルシャ語」という組み合わせ。しかしその根底には、アッバス・キアロスタミやジャファル・パナヒといったイラン映画の巨匠たちに対する底知れぬ敬意が流れている。子どもたちが凍った池に閉じ込められた紙幣を取り出そうと奔走するプロットは、まさにイラン古典映画の素朴で力強いリアリズムそのものだ。
だが、物語が進むにつれて風景は奇妙な変容を見せる。七面鳥の記念碑、シュールな観光ツアー、哀愁を帯びた公務員たち。リアリズムの枠組みを借りて構築された見事なシュールレアリスム映画であり、観客は現実の論理が音を立てて崩れ去る心地よさに浸ることになる。不条理な笑いの奥に、言葉では言い表せない深い孤独と連帯が同居する――この絶妙なブレンドこそが、本作を孤高の傑作たらしめている要因だ。