「比咩の湯」を巡るネット言説の中で、特に事実と乖離している2つの誤解について、現地取材と公的資料からファクトチェックを行います。
第1の誤解は、「比咩の湯の跡地が廃墟化して放置されている」というデマです。地方の温泉街で共同浴場が閉鎖されると、解体費用が捻出できずにゴーストスポット化するケースが全国で見られますが、比咩の湯に関しては当てはまりません。能美市によって旧建物は速やかに解体撤去され、跡地は温泉街の景観に配慮した区画整理やポケットパーク、公共スペースとして安全に保全・利活用されています。危険な廃屋が放置されている事実は一切ありません。
第2の誤解は、「白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)の境内にある温泉と混同されている点です。名称に「比咩」の文字が含まれるため、白山市に鎮座する白山比咩神社の施設であると勘違いする旅行者が後を絶ちません。「比咩の湯」という命名は、辰口温泉が霊峰白山を開山した泰澄大師(たいちょうたいし)によって発見されたという伝承に由来し、白山比咩神社の御祭神である菊理媛尊(くくりひめのみこと)にあやかって名付けられた歴史的経緯によるものです。神社の境内に存在するわけではなく、あくまで能美市辰口町の温泉街に位置していた独立した総湯でした。